2022年11月28日(月)発売のヘレスの地元紙ディアリオ・デ・ヘレスに日本のシェリー・ウィークに関する記事が掲載されました。
日本語の要約は紙面の写真の後に掲載します。
要訳
スペインではコロナウィルスが発生する前の生活に戻りつつありますが、日本ではまだこれに対する警戒心が強く現在も社員へ外食の自粛を要請している企業もあります。また、地方へ行けば行くほど外食や旅行を自主的に控える人も少なくありません。
しかし、2022年10月からは外国人観光客の個人の入国が再開されています。自治体が外食や旅行に使えるバウチャーを発行するなど、ようやく規制緩和の兆しが見えてきました。その一方で原油価格の高騰や円安の影響により海外からの輸入品の価格が高騰するなど、厳しい状況が続いています。
シェリー原産地呼称統制委員会公認のシェリー・エデュケーターである木村友胡は、日本でのインターナショナル・シェリー・ウィークのコーディネーターとして、この難題に取り組みました。今年は北は北海道から南は鹿児島県まで、257の公式イベントが開催されました。これはスペインとイギリスに続く世界で三番目に多い数です。
日本のシェリー・ラバーたちは飲食関係のプロとして、あるいは消費者として、常にこの活動に参加することに興味を持っています。シェリー・ウィークは日出る国のすべてのシェリー・ラバーたちにとって特別で重要なイベントです。
温泉でタペアール
アジアで唯一のオズボルネのトロ(雄牛)が設置された新潟県の松之山温泉では、2021年からシェリー・ウィークに参加しています。
今年企画されたのが、『松之山温泉ふぇすてぃBAR』。温泉地として有名なこの地でオズボルネのシェリーを14軒の旅館と飲食店が提供する料理と楽しむことが出来るイベントです。スペインでタパスを食べ歩くような形式です。立教大学と高崎経済大学の観光を学ぶ30名の学生たちも参加し、シェリー・ウィークはホスピタリティー産業と大学の有益なコラボレーションとなりました。オープニング・セレモニーでは、東京銀座のしぇりークラブみやげ亭の和泉もも子さんがベネンシアールでシェリーを提供し、会場を盛り上げました。
多様性に富んだペアリングの提案
シェリー原産地呼称統制委員会公認ベネンシアドーラであるしぇりークラブみやげ亭の和泉もも子さんは、2018年まで日本最大の市場があった築地場外の飲食店や食品店と連携し、シェリー酒と日本一と言われる築地グルメのペアリングを日替わりで提供する5日間の連続企画を実施。会場には連日沢山のお客様が訪れました。
アジア最大級のワインスクール、アカデミー・デュ・ヴァンでスペインワインの教鞭をとる森本知佐子さんは、鎌倉の日本料理店らい亭で、蟹をふんだんに使った伝統的な日本料理とシェリーのペアリングを企画しました。また、ボデガス・トラディシオンのブランドアンバサダーでもある木村友胡とビデオ通話を使い、同ボデガのシェリーについて解説をしました。
また日本全国に300名以上の会員を持つNPO法人シェリー・ソサエティ・ジャパンが、日本の家庭料理とシェリーのペアリングを楽しむ会を東京月島のTABELUNAで開催。(この会のための特別料理であり、通常はスペイン料理店として営業)この会では、から揚げ、ポテトサラダ、煮物など日本の食卓に欠かせない料理の数々が提供されました。『特にだし汁とアモンティリャードは最高の組合わせです』と会長の西村久美子さんは語りました。
新規オープンのシェリーバーも参加
滋賀県長浜市に今年5月20日にオープンしたばかりのシェリー酒を多数取り扱ったスペインバル、パロミノ PALOMINO今年初めてシェリー・ウィークに参加しました。このお店のオーナーはシェリーをこよなく愛し、ヘレス地域のブドウの女王であるブドウにちなんでこのお店と愛犬にパロミノと名付けるほどです。現在約30種類のシェリーを取り揃えています。
さらに、2022年10月19日には、五反田のシェリー・バー、エチェガライの2号店として東京目黒にジャカランダがオープンしました。オーナーの大森栄治さんは、東京中目黒のシェリー・バー、ラ・ベネンシアで修行したあとにエチェガライをオープンした20年以上のキャリアを持つベテランです。エチェガライは常時70種類以上、ジャカランダは50種類以上のシェリー酒を提供しています。シェリー・ウィーク期間中は両店舗ともシェリーを楽しむお客様にハモン・セラーノの小皿をサービスし、好評だったとのこと。
コルタドール・ハモン(生ハムカット職人)も活躍
2017年に日本で開催されたスペイン・アンダルシア製品輸出促進公社(EXTENDA)主催のコルタドール・デ・ハモン(生ハムカットの職人)のコンテストで優勝した千葉県船橋新のBar 篠崎のオーナーの篠崎新平さんと京都市中京区の高倉小よこバルの横川咲さんも第9回インターナショナル・シェリー・ウィークに参加しました。
Bar 篠崎では、会期中25種類のオロロソを用意し、イベリコ豚の生ハムとのペアリングでお客様を楽しませました。期間中25本のオロロソが完売し、他のタイプのシェリー酒も注文され、通常の1.5バイの売り上げを記録し、新しいシェリー・ラバーがおよそ20%増加したそうです。
高倉小よこバルでは、マンサニーリャを中心とした各種のシェリーと、ハモン・イベリコやハモン・セラーノを提供しました。ハモンを切るのは、2021年10月にスペイン・ムルシア州で開催された第三回インターポーク、スペイン・グランドファイナルに選出された横川咲さんです。女性の生ハムカット職人は本場のスペインでも珍しいが、日本ではさらに珍しいです。
また、同じくコルタドールであり、シェリー原産地呼称統制委員会公認ベネンシアドールである小川透さん(東京新宿区の小笠原伯爵邸)と、作元典子さん(東京港区 スペイン料理フェルミンチョ)もそれぞれコース料理や、ハモンとシェリーを楽しむことが出来るイベントを企画しました。
オンラインショップの台頭
日本はコロナ禍においてはスペインほどの厳しいロックダウンには至らなかったものの、日本では外出を極端に自粛する傾向が強まり、ワインの輸入会社が独自にオンラインショップを展開するようになりました。
そこで、ボデガス・アルグエソの輸入元である株式会社スコルニワインと、ボデガス・ルスタウの輸入元であるミリオン商事株式会社では、Twitterでのキャンペーンや、日替わり販売、ワイナリーのロゴ入りグラスのプレゼントなどのオンラインキャンペーンを行い、大きな成果を上げました。シェリー・ウィークを家庭で楽しみたいというシェリー・ラバーたちの心をつかんだ形です。
様々なガストロノミーの参加
日本ではスペイン料理店やシェリー・バーなどの専門店でしか味わえないと思われがちなシェリーですが、最もエキゾチックだったのは中華料理店の西華房(石川県金沢市)と海月食堂(兵庫県神戸市)の二店舗でした。シェリーと共にそれぞれ本格的な中華料理が提供された。昨年に引き続き、新しいシェリー・ラバーの獲得に貢献しています。
今年は兵庫県神戸市の創作フレンチレストラン、ユニックの参加も注目されました。新たにフランス料理のファンもシェリーを知るきっかけとなりました。
シェリーへの情熱
日本では小さな都市ほど外食に対して保守的で厳しい傾向がみられますが、キッチン・ル・マーシ(北海道釧路市)、BAR DARA(長野県飯田市)、スペイン料理BULL LATTE (香川県高松市)、Rica Rica(愛媛県松山市)、サンルーカル(岡山県岡山市)、ブラッセリ―・ヴァンダンジュ(鹿児島県鹿児島市)が参加しました。シェリーの飲み比べセットやハッピーアワーなど、様々なお客様を惹きつける楽しいイベントが行われました。
シェリー樽からシェリー酒へ
ウィスキー愛好家ならご存知の通り、日本では世界的に評価の高いウィスキーが生産されており、熱狂的なウィスキー・ラバーも非常に多くいます。近年シェリー樽で熟成させたウィスキーに興味を持つ人が増えていることから、Bar TRENCH(東京都渋谷区)、Bar Illusions(東京都中野区)、Bar Vivre(東京都中野区)などのオーセンティックバーが、シェリーカクテルはもちろん、レアシェリーを提供しました。
シェリーの新しい規制についての勉強会も開催
バル・デ・オジャリア(東京恵比寿)のシェリー原産地呼称統制委員会公認ベネンシアドールの渡邊俊彦さん、シェリー原産地呼称統制委員会公認シェリー・エデュケーターの宇都宮斉さんはそれぞれのセミナーの中で新しいシェリー酒の規制について説明を実施。スペイン語、英語以外の言語では世界初でした。これは日本人が新しい規制を学ぶことを望み、彼らの勤勉さを示すものです。
ヘレスから1万キロ以上離れた極東でもシェリー・ウィークは大きく楽しまれました。InstagramなどのSNSでは、『シェリー・ウィークが終わっても、私たちにとっては毎週がシェリー・ウィークです』という言葉が投稿されました。