今年はスペインは連日熱波に襲われており、私がヘレスに来てから一番暑い夏を迎えています。
スペインをはじめ、ポルトガルを含むイベリア半島では毎年夏には暑さのせいで山火事があちこちで起きていますが、今年も例外なく色々な場所で山火事が起きています。そしてついに7月11日、ヘレスの旧ボデガス・クロフトの敷地内で大規模な火災が起きました。
幸い建物に火の手は及ばず、建物の周りに生えていた雑草などの植物が燃えてしまったようです。
せっかくなので少しだけ、ボデガス・クロフトの近代の歴史に触れたいと思います。
クロフトというと、シェリー・ラバーの皆さんであれば「クロフト・オリジナル」を思い浮かべると思います。まさしくその商品を生み出したボデガの事です。
クロフト オリジナル ペール・クリームシェリー ゴンザレス・ビアス スペイン アンダルシア やや甘口 酒精強化 750ml 価格:2,750円 |
敷地に火災が起きてしまったこの建物は建築家ビセンテ・マッサベウ (Vicente Massaveu)によってヘレスの郊外にあるカレテラ・デ・シルクンバラシオン (Carretera de Circunvalación)、もしくはレイナ・ソフィア通り (Avenida Reina Sofía)に建てられたもので、完成は1979年。ランチョ・クロフト(Rancho Croft)と命名されました。敷地面積は30万平方メートル、少なくとも5万樽はあったとされ、連続プレス機2第、冷却装置、ろ過装置、何本ものステンレスタンクがあった当時としては最新の設備を備えていたそうです。
この当時はディアジオ社がクロフト社を所有していましたが、2001年に売却。ポートワインの部門はテイラー・フォンセカ (Taylor Fonseca)社に、シェリーの部分はゴンザレス・ビアス (Gonzalez Byass)社に渡りました。ボデガとワインは90億ペセタでゴンザレス・ビアスに移管されました。同社はイギリスで大きな市場を持っていたペイル・クリームのパイオニアであるクロフト・オリジナルを欲していたと言われています。
一部のアニャーダはボデガス・トラディシオン(Bodegas Tradición)の創業者であるホアキン・リベロ (Joaquín Rivero)氏が買い取りました。
また、今回敷地の一部が燃えてしまったランチョ・クロフトは2004年に3600万ユーロで不動産開発会社に売却されました。しかし、30ヘクタールの敷地に600戸の住宅を建設する計画が承認するまで放置され、それが実現したのは2009年の事でした。その後もこの敷地の利用に関しては様々な計画が持ち上がっているものの、実現することは無く現在も放置されている状況です。
残念ながら私はこの建物の中は訪れたことはありませんが、外観はとても優美な建物です。一日も早く、有効活用される日を望んでいます。