先日イギリスのBBCの昔の映像を流すBBC ArchiveのFacebookページで面白い映像が紹介されていました。
1964: Tonight: Spanish breakfast (1964年の今日 スペインの朝食)
1964年の南スペインのレポートです。
この町がどこかは判別ができませんが、シェリーのようなものを飲んでいる人々が映っています。使っているグラスは昔よく使われていたコピータ(copita)と呼ばれるタイプの小さなグラスです。このレポート自体はイギリス風の皮肉を聞かせたもので(英語では "tongue in cheek" comment と言います)、「スペイン人の朝ごはんはあまりよくない」と言いつつ、うらやましい…ということが読み取れます。(どう考えてもスペインの人たちが食べているのはお昼ご飯というところがヒントです。)ところどころに見られる約50年前の風景が非常に面白いです。
さらに面白いのが1:55以降の映像。これは、ティオ・ぺぺで有名なボデガ、ゴンザレス・ビアスのものだと思います。こちらのボデガは観光客の見学ルートにネズミ用のシェリーグラスとはしごが置いていあることで有名です。その昔ボデガで働いていた生産部門の人が、お昼ご飯を蔵の中で食べていて、パンくずなどをネズミにあげていたそうです。それからネズミが彼に寄って来るようになったので、試しにシェリーをあげてみたら飲んだそうです。そこで、シェリー用グラスとはしごを設置したところ、時々ネズミがはしごを上手に上ってシェリーを飲んでいるのが見られるようになったことから、以下の写真のようなかわいいネズミのコーナーができました。
このコーナーの近くには、ネズミがシェリーを飲んでいる写真も飾ってあります。
ゴンザレス・ビアスで何十年と働いている人を何人も知っていますが、実際にネズミがこのようにシェリーを飲んでいるのを見た人はほんのわずかで、しかも数えるほどだそうです。私がこのコーナーを見たときはとても驚いたことを今でも鮮明に覚えています。
なぜならば、通常ネズミはボデガにとってはうれしくない動物です。現在ではほとんど見かけることはありませんが、伝統的にはシェリー生産地域のボデガではネズミ捕りのために、猫や犬が飼われていました。そしてヘレスの固有種ともいわれる、ラトネロ・ボデゲロ・アンダルース(El Ratonero Bodeguero Andaluz、通称ボデゲロ)というネズミ捕りのエキスパート犬種がいるほどです。
以下のビデオは2020年にヘレスがヨーロッパ文化遺産都市として立候補する際に、ボデゲロが紹介されたビデオです。
この犬種をテレビで紹介するためにロケが行われたのですが、場所はゴンザレス・ビアス。あのネズミさんたちは大丈夫だろうかと心配になったのは言うまでもありません。
このボデゲロですが、シェリー生産地域を出ると面白いほど見られません。ぜひヘレスにいらっしゃったときには、ボデゲロが散歩していないか見てみてください。