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ディアリオ・デ・ヘレス記事 日本文化の中のシェリー酒

2022-02-14

2022年2月14日のディアリオ・デ・ヘレス紙に掲載された記事『日本文化の中のシェリー酒 El jerez la cultura japonesa』をご紹介します。

この記事は、私のパートナーであるホセ・ルイス・ヒメネス・ガルシア(José Luis Jiménez García)が毎週ヘレスの地元紙ディアリオ・デ・ヘレス(Diario de Jerez)紙に連載しているコーナーで、シェリー酒に関係する文化、歴史、ボデガのことを深堀して紹介するコーナーであるエル・レブスコ(El Rebusco)の中のひとつです。

2022年2月14日(月)ディアリオ・デ・ヘレス(Diario de Jerez) 掲載
エル・レブスコ(EL REBUSCO)
日本文化の中のシェリー酒(El jerez en la cultura japonesa)

文学から、漫画、アニメまで

村上春樹氏は小説『1Q84』の中で、シェリー酒へ美しい言葉を捧げている

2021年11月21日(日)、ディアリオ・デ・ヘレスでは、同紙の編集者でワインの専門家であるアンヘル・エスぺホ氏が執筆した記事を掲載した。ヘレス地域(以下マルコ・デ・ヘレス)の日本市場における近年の商業的状況と、新型コロナウィルス(COVID-19)による危機後の日本における同分野の実投資についてである。記者は「酒精強化ワインの量は少ないものの、日本はシェリー酒にとって戦略的市場であり、シェリー原産地呼称統制委員会や生産者組合(FEDEJEREZ)を通して何十年も重要なプロモーション活動を展開している」と述べた。
新型コロナウィルスの悪影響とその規制措置(飲食店の営業時間短縮や、酒類提供自粛など)により、2020年に経験した急激な下落にもかかわらず、酒精強化ワインは特に2025年まで4.5%の成長が期待できると詳述している。
「日本向けに出荷されるシェリー酒のうち、フィノとマンサニーリャは全体の2/3近くを占めており、特に重要な存在である。」ICEX(スペイン貿易投資庁)は、この傾向を「和食との相性が非常に良いため」と説明している。
日本の消費者は、ワイナリーの由来やワインの製法など、ユニークなストーリーを持つ商品に興味を示しており、ヘレスが得るものは多いと考えることが重要である。
我々のワインと日本との関係は何世紀も前にさかのぼる。1611年エストレマドゥーラ出身の探検家、セバスティアン・ビスカイノがこの遠い国に最初に降り立ったスペイン大使であった。その土地の領主である将軍をシェリー酒でもてなした。その際に「彼は食べ物にはほとんど興味がなく、ヘレス酒には大いに興味があった。彼らは酔うのが大好きだから、良いヘレス酒はキリスト教の布教に最適だ」と、我々のワインが日本人に与える可能性を強調した。
日本の愛好家たちがシェリー酒の全てを詳しく知る機会を得たのは、1990年に出版された、マヌエル・マリア・ゴンザレス・ゴルドンの本(『シェリー…高貴なワイン』大塚謙一氏 監訳)からで、2017年に東京と京都のしぇりークラブのオーナー、高橋美智子氏が出版した本『Sherry 樽の中の劇場』で更新されることとなる。
シェリー原産地呼称統制委員会公認シェリーエデュケーターである木村友胡の案内でこの遠い国を訪ねた経験から、シェリーという長い歴史を持つワインのユニークさこそが、日本人に我々のワインを広めるのに有利であることを再確認した。
筆者は2016年に信州大学、2018年に神奈川大学で講演した。後者は日本・スペイン国交樹立150周年に際してのものだった。
このエル・レブスコでは、私は『日本人作家・逢坂剛と、シェリー酒への愛』、『日本とヘレスの特別な関係』、『日いづる国のシェリー酒』と3回にわたり、このことを取り上げている。

フラメンコからシェリー酒へ

作家の鳴神響一氏は今年1月、脳科学捜査官 真田夏希シリーズの最新作『ヘリテージ・グリーン』を発表したばかり。
日本では出版した本の中でもトップに位置する作品が、一般の人々が書店で見つけられる小説の塊の中で、気付かれずにいる可能性がある。欧米人ならなおさらのことである。
しかし、鳴神氏の著書は私たちのヘレスの人々にとって、どのような興味を抱かせるのだろうか?この謎は、この文学ジャンルの熱心な読者であるマルコ・デ・ヘレスのワインの専門家の木村友胡が解き明かす。
「1962年に東京都で生まれた鳴神先生は行政書士や社会保険労務士の資格を取得し、学校事務職員として勤務の後、2014年にその職を辞して執筆活動に専念することを決意した」と述べる。
鳴神氏は『私の愛したサムライの娘』でデビューし、第6回角川春樹小説賞(角川春樹事務所)、第3回野村胡堂文学賞(日本作家クラブ)を受賞した。
真田 夏希のシリーズの本は11冊まで出版されており、この主人公の真田 夏希は普段は心理学を駆使して難事件を解決している。一日の仕事の疲れをいやすためにシェリー酒を飲むのが彼女の日課である。
前出の最新作では、真田は『知人から教えてもらったボデガス・トラディシオンのフィノが冷蔵庫にある』と言及している。
この粘り強い警察官の足取りを追うと、第3作目の『イミテーション・ホワイト』に2度登場する「ティオ・ペペ」を始め、第1作目の『脳科学捜査官 真田 夏希』では3回、第2作目の『イノセント・ブルー』では4回、第9作目の『ストレンジ・ピンク』では7回とシェリー酒が登場することから、彼女が我々のワインの熱烈なファンであることが分かる。また、鳴神氏は17世紀を舞台にしたシェリー酒が好きな2人のサムライが登場する作品も発表した。
鳴神氏は木村に、マンサニーリャをよく飲むことを伝えた。その中でも、自宅近くで手に入ることから、イダルゴ・ラ・ヒタ―ナをよく飲んでいるそうだ。おそらく近年このヘレスのボデガのシェリー酒を日本で販売しているシェリー・エデュケーターの木村友胡(著者の友人)の影響もあるのだろう。鳴神響一氏はフラメンコのファンを自認しているので、これ以上の組み合わせはないだろう。

村上春樹から逢坂剛まで

ノーベル賞・文学賞の候補者、村上春樹氏の心に響く小説『1Q84』(2009年発表)の2冊目の第1章『青豆 あれは世界でいちばん退屈な町だった』には、嬉しい驚きが待っている。物語の舞台は1984年。
主人公の青豆は老婦人の屋敷に着くと、使用人のタマルにシェリー酒の瓶とグラスを2つ持ってこさせた。「夏の午後に常温のシェリー酒を飲むのが私は昔から好きなのです。暑い時に冷たいものを飲むのはあまり好きではありません。シェリー酒を飲んでしばらくすると、少し横になって眠ります。知らないうちに眠ってしまうのです。眠りから覚めると、少しだけ暑さが消えています。いつかそのようにして死ねるといいのにと思っています。夏の午後にシェリー酒を少し飲み、ソファに横になって知らないうちに眠ってしまって、そのまま二度と起きなければと」
「青豆もグラスを手に取って、シェリー酒を少しだけ飲んだ。青豆はその酒の味があまり好きではない。しかし、確かに何かが飲みたい気分だった。(略)今度はいくらか味が感じられた。アルコールのきつい刺激が舌を刺した。」
村上氏が作品の中でシェリー酒に言及するのはこれが初めてでではなく、『神の子どもたちはみな踊る after the qake』に収められている物語の中で、彼はプールサイドでのこの瞬間を描写している。「彼女は泳ぐのをあきらめて、パラソルの下に寝ころび、ティオ・ペペをペリエで割ったものを注文し…(略)」
村上氏が2019年1月26日(土)にエル・パイス紙に語った「もし私がビールを飲む人のことを書いたら、読者がビールを欲しがることを期待する。私が文学にその次元を刻印しようとするのは、身体の反応を本物の、手に負えないものとして信頼しているからである」という言葉を振り返る価値はある。村上氏がシェリー酒を飲みに誘ってくれているのだ。
一方、スペインとその風俗を知り尽くした作家の逢坂剛氏は、フラメンコの大ファンであり、ギタリストでもある。スペインに特化した『イベリアシリーズ』を始め、幅広い作品を発表している。
1986年『カディスの赤い星』を発表し、第5回日本冒険小説協会、第40回日本推理作家協会賞、第96回直木賞を受賞した。にもかかわらず、今日に至るまで彼の作品はほとんどスペイン語に翻訳されていない。
彼の作品には、シェリー酒やもちろんティオ・ペペについての言及が頻繁にある。
2016年に亡くなった画家でフラメンコ歌手の堀越千秋氏とは共通の趣味を持っていた。両氏ともヘレスで時折お目にかかることができた。

漫画からアニメまで

日本における漫画は、世界中に広がる大衆現象である。1989年当時、日本で出版された書籍・雑誌のうち38%が漫画であった。年齢、職業、社会階層を問わない漫画がある。日本のアニメも同様である。その中から、ワインやスピリッツに関連するもの、特にシェリー酒の銘柄が登場するストーリーを取り上げる。近年では、そのような飽和状態の市場においてシェリー酒の位置を確保することができるようになった。最も長く続いたのは、1985年から発表された故古谷三敏氏の『BARレモン・ハート』である。2015年にTVシリーズ化された。第2巻にはティオ・ペペが登場し、14巻はルスタウアルマセ二スタ・シリーズのアモンティリャードを登場人物がグラスを傾けるときにヘレスを想像している。また、23巻ではガルベイのオロロソVORSが登場する。
続いて1998年に作・城 アラキ氏、画・甲斐谷 忍氏、監修・堀 賢一氏によって制作された『ソムリエ』の第6巻でドン・ソイロ・フィノが登場する。
『バーテンダー』では、最高のカクテルを作ると評判の天才バーテンダー佐々倉 溜のナイト・ライフを紹介する。この主人公は東京の中心地、銀座の奥まったところにあるイーデンホールというバーを切り盛りしている。この作品の第2巻では、ティオ・ペペが、第12巻ではルスタウフィノ・ハラナが登場する。作・城 アラキ氏、画・長友 健篩氏による作品で2006年にアニメ化され、フジテレビ系列で放映された。
最近登場したのは、漫画『ながたんとあおと』で、2020年に出版された磯谷友紀氏の作品である。京都で料亭を経営する歳の差カップルの奮闘を描いた作品である。第4巻では隠されていた1950年代のシェリー酒が3本再現されている。
最後は尾田栄一郎氏が原作、宇田鋼之助氏がアニメ版の監督をした日本の人気漫画『ワインピース』を紹介する。登場人物のひとり、ゼファーはシェリー酒を好んで飲んでいる。この作品は東映アニメーションがアニメ化し、1999年8月からフジテレビ系列で放映している。

探偵物語とティオ・ペペ

日本ではカルト的な人気を誇るが、欧米人には知られていない人気テレビシリーズ『探偵物語』。俳優の松田優作氏が演じる破天荒な工藤俊作は極めて個人的だが、効果的な方法をとる私立探偵である。このシリーズは1979年から1980年にかけて全7話が放映され、評論家や視聴者の間で大成功を収めた。工藤俊作が、当時シェリー酒のトップ・ブランドであったティオ・ペペにハマったことを、いくつかのエピソードで表現している。

以上

いかがでしたか?
日本の漫画、小説、ドラマ等様々な作品でシェリー酒が取り上げられていることがこの記事からお判りいただけたかと思います。
その他ホセ・ルイスはこのエル・レブスコをまとめた本を出版すべく鋭意準備中です。
その本が出版されたら、ぜひこちらのブログでもご紹介したいと思います。

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木村 友胡(Tomoko Kimura)

シェリー酒に魅せられて2015年よりスペイン アンダルシア州へレス・デ・ラ・フロンテラに移住。 シェリー原産地呼称統制委員会公認シェリー・エデュケーター。 シェリーブランデー原産地呼称統制委員会公認シェリーブランデー・エデュケーター。 スペインワインおよび食品のエージェント、プロモーション。 スペイン語、英語の通訳・翻訳 お仕事のご依頼、お問合せは随時受け付けております。 旅行、食べ歩き、写真を撮りながらの街歩きが趣味。

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