米国時間11月30日に衝撃的なニュースがリリースされました。
ビームサントリー社がスペインで保有するブランデーおよびシェリー事業を売却することでEmperador Inc. (エンぺラドール)と合意した、というものです。買収額は約370億円、へレスおよびトメリョーソにある生産設備と「Fundador(フンダドール)」、「Terry(テリー)」、「Tres Cepas(トレスセパス)」、「Harveys(ハーベイズ)」のブランドが含まれるとのこと。
現在はビームサントリー、もとはドメック社といい1730年創業の歴史ある会社で、経営者一族であるドメック家のお墓がへレスのカテドラルの中にあるほどの名家です。また、映画「シェリー&パロ・コルタドの謎」にもドメック家の方が出演されていたので、こちらを見た方にとっては記憶に新しいかもしれません。
1999年にドメック家は会社を売却し、その後シーグラム社、ビームインターナショナル社が買収。そして2年前にサントリーがビームインターナショナルを買収したことで、社名が「ビームサントリー」となりました。それが2年という短期間の間に今度はフィリピンの企業に買収されたということで、へレスでは大変な話題になっています。
このドメック社の名前が国際社会では忘れ去られようとしている寂しさはありますが、視点を変えてみるとエンぺラドール社は昨年より積極的な世界戦略に踏み切っています。2014年2月にはスペインのブランデー会社、ラス・コパス社の株式を50%取得、5月にはスコッチウィスキーの会社「ホワイト&マッカイ」の買収をしました。2014年の世界の蒸留酒販売量では同社は韓国のジンロ社に次いで2位の位置についています。今回買収されたシェリーブランデーの「テリー」はスペインでは販売量がナンバーワンでしたが、世界的にはそれほどの数ではありません。しかしながら、今回の買収によりフィリピンを中心としたアジア圏での伸びも期待できるかもしれません。そしてハーベイズに関しても、です。へレスの人たちは「ドメック家の名前がさらに消えてしまった」という寂しさと衝撃で今回のニュースが受け止められたようです。私もその中の一人ですが、せめてそのブランドがこれからまた世界市場で伸びてくれることを期待したいと思います。
9月に撮影したビームサントリー社の正面入り口。私がへレスのボデガを初めて訪れたのは、この前身であるビームインターナショナルの時でした。