本日7月27日付のヘレスの地元紙ディアリオ・デ・ヘレスに『ヘレスは未来を強固にするために大きく飛躍する El vino de Jerez da un salto de gigante para afianzar su futuro』という記事が発表されました。
長期にわたっての話合いがなされていた、シェリー酒の規制の変更にようやく承認が下りました。
シェリー酒の原産地呼称法の86年の歴史の中で、6回目の変更。今回の変更はかなり大きなものとなるため、シェリー酒にかかわる人たちにとってはとても重要なものになります。
大まかな変更点は、以下の通りです。
- シェリー酒生産地域の拡大
- サンルーカル・デ・バラメダでのフィノの熟成の禁止
- バッグ・イン・ボックスと量り売りワインの販売について
- 酒精強化されていないシェリー酒の認可
- 新たに6種類の土着品種の使用を許可
- マンサニーリャ・パサダ、およびフィノ・アンティグオの新カテゴリー創設
- マンサニーリャ・コミッションとヴィンヤード・コミッションの創設
1. シェリー酒生産地域の拡大
現在はシェリー酒生産地域=シェリー酒の熟成地域(へレス・デ・ラ・フロンテラ、サンルーカル・デ・バラメダ、エル・プエルト・デ・サンタ・マリア)となっています。
この三つの町をつないだ地域ということで、『シェリー・トライアングル』という言葉も使われています。
しかしながら、今回の改正で指定のシェリー用のブドウの生産地域で生産された、原産地呼称統制委員会の条件をクリアしたワインに関しても、シェリー酒と名乗ることができるようになります。
具体的には、チクラナ(Chiclana)、トレブヘナ(Trebujena)、チピオナ(Chipiona)、ロタ(Rota)、プエルト・レアル(Puerto Real)とレブリハ(Lebrija)が加わります。
レブリハのみセビーリャ県、その他の市町村はカディス県に属します。
以下の地図の青い丸の自治体が新しいシェリー産地として認定されます。
この変更でどういうことが起こるかというと、例えば現在日本に輸入されているボデガス・エル・ガト(Bodegas el Gato)のワインには、シェリー原産地呼称統制委員会のシェリー酒としてのシールがバックラベルにありません。また、表のエチケットにもSHERRY JEREZ XEREZという表記はありません。
(ただし、こちらのボデガがリリースしているマンサニーリャはボデガス・バロン Bodegas BARONが生産しているためこの例には入りません。)
しかし新しい規制が実施されれば、ボデガが希望すればこれを付けられるようになるということです。
2.サンルーカル・デ・バラメダでのフィノの熟成の禁止
新しい規定にでは、サンルーカル・デ・バラメダで生物学的熟成をしたすべてのワインがマンサニーリャでなければならないため、この地域のボデガにあるフィノタイプのワインの在庫を処分するか、ほかの自治体に移して熟成を続けねばなりません。移行期間は10年。その後はサンルーカルで生物学的熟成を経たワインはすべてD.O.マンサニーリャ・デ・サンルーカル・デ・バラメダによって規制されます。
この変更により、例えば現在サンルーカル・デ・バラメダにあるファン・ピニェロ(Juan Piñero)のボデガの中にあるフィノ、カンボリオ(CAMBORIO)は、移行期間の10年の間に在庫を処分するか、サンルーカル以外の他の自治体に移さなくてはなりません。
3.バッグ・イン・ボックスと量り売りワインの販売について
長い間サンルーカルのボデガとの係争があったバッグ・イン・ボックスでのシェリーの販売は禁止ですが、チクラナでだけ5年間認められます。これは、輸送のためだけに許可され、10リットル、15リットル、20リットルの使い捨ての容器でなければなりません。
また、ヘレス地域(マルコ・デ・ヘレス)においてはボデガに併設されているワインの販売所(Despacho デスパチョ)で量り売りのワインが購入できる。これは2リットルと5リットルのPET容器が許可されます。
4.酒精強化されていないシェリー酒の認可
酒精強化されていないが、最低アルコール度数15%、最低熟成年数が2年という最低条件が守られているワインが原産地呼称に含まれるようになります。
2021年8月に発売された、かつてヘレスでも行われていた酒精強化をしていないスタイルで造られたウィリアムス&ハンバートのFinolis Sobremaduro Añada 2016(フィノリス・ソブレマドゥーロ ・アニャーダ2016)は、アルコール度数が14.68%のためこの規定には該当しません。ただし、今後新しいビンテージ(アニャーダ)のものが出て、アルコール度数が15%を超えた場合は、シェリーとして申請される可能性があるのではないかと思います。
5.新たに6種類の土着品種の使用を許可
以下の土着ブドウが新たに認定品種として認可されます。これらはフィロキセラ以前にマルコ・デ・ヘレスで栽培されていたものです。
マントゥオ・カスティリャーノ(Mantúo Castellano)、マントゥオ・デ・ピラス(Mantúo Pilas)、べヘリエゴ(Vejeriego)、ペルノ(Perruno)、カニョカソ(Cañocazo)、ベバ(Beba)
6.マンサニーリャ・パサダ、およびフィノ・アンティグオの新カテゴリー創設
マンサニーリャ・パサダ(Manzanilla Pasada)とフィノ・アンティグオ(Fino Antiguo)については新しい名称ではありませんが、新しい規制では平均熟成年数最低7年以上のものが名乗ることが可能になります。
7. マンサニーリャ・コミッションと、ヴィンヤード(ブドウ畑)・コミッションの創設
5月になされた合意では、マンサニーリャの原産地呼称のみ影響する問題を扱うマンサニーリャ・コミッションの設立も予定されています。11月までに文書案を作成する予定。
ヴィンヤード・コミッションはアンダルシア州政府が2002年に実施したこの地域のブドウ畑の生産コストに関する調査を更新することと、アンダルシア農業・漁業研究所(IFAPA)と協力して、ブドウ畑の収益性を保証する適切な価格を確立することを目的としている。